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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

山陽 × 清川商店

プロダクトとのセット展示で効果的に革の魅力を訴求

創業より一世紀を越す山陽。約1万坪の敷地において、原皮の処理から仕上げまでを一貫して行っている総合タンナーだ。クリエイターとのパートナーシップを重視しており、高度な技術を要求される革の開発にも積極的に取り組み、多くのメーカーから厚い信頼を寄せられている。

専門性の高い革を生産するには、相応の設備も必要だ。山陽には、ナチュラルなヌメ革を製造するためのピット槽をはじめ、大量の革をなめすことができる大型のドラム、他ではなかなかお目にかかれない大型低温真空乾燥機なども完備。生産量はもちろん多種多様なオーダーに応じることもできる。
日本最大のファッション展示会である『ファッションワールド東京』。今回はコロナ禍での開催となっ『第6回 国際生地・素材EXPO』で展示する皮革は、「機能性商品」をテーマにバラエティー豊かなラインナップを揃えた。目玉となるのは、「GOREアリエルアンチック」と「ダーズリーFF」である。

「GOREアリエルアンチック」は、キップを使用しているGORE-TEX対応の防水革。自然な光沢感とこまやかな銀先、ソフトな手触りが持ち味だ。山陽の松浦弘明さんによると、「GORE透湿試験機を設置している国内のタンナーは弊社だけで、GORE基本スペックの透湿性チェックをしやすい環境にあります。この試験機をフル活用し、GORE対応のさまざまな防水レザーを研究・開発しています」。
「ダーズリーFF」は、カーフを使ったフッ素フリーの防水対応革。アニリン仕上げで透明感のあるソフトスムースレザーだ。松浦さんは、「有機フッ素化合物であるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)が含有規制され、フッ素と名の付くすべてが有害であるかのようなイメージが全国に広がりました。フッ素フリーを求めるお客様の要望に応える形で今回は提案させて頂いています。静的・動的防水試験において、フッ素防水と遜色のない結果を出しています」と、その特性を語ってくれた。
SDGsに配慮しつつ、単なる防水でなく一歩踏み込んだ防水という付加価値を備えた革の開発にみごと成功。最高の素材をメーカーに提供することになった。

プラスαの付加価値のあるバッグが誕生

山陽の革でプロダクトを製造することになったのは、1960年創業の清川商店。ものづくりの街であり、東京スカイツリーのお膝元でもある東京・墨田区に工房を構えるメーカーだ。

清川商店の主軸は、レディースのフォーマルバッグ。プライベートブランドとしては、ビジネスユースを対象に機能性を追求したazzuni(アッズーニ)を展開。2019年からはクラシカルなデザインを志向するKIYOKAWA(キヨカワ)をスタートし、イタリアにおける展示会で高く評価されている。

清川商店の松村由美さんは、今回のプロジェクトにおいて「防水皮革を使ってみたい」という思いが念頭にあったという。

「防水革というと、合成皮革のような表情になってしまいがちという先入観を持っていました。けれど、山陽さんの革は防水仕様ながら本物らしさがあって、風合いプラスαの付加価値があるところを魅力に感じました」

「GOREアリエルアンチック」を素材に完成させたのは、メンズ向けのビジネスバッグ。松村さんによると、「革の風合いを見て、かっちりとしたスクエアタイプのバッグが合うだろうと思ました。クラシックなデザインに合わせて金具もアンティーク調のものを使い、独特の雰囲気を出しています。また、長く背負っていても疲れないよう腰に当たる部分にはクッション材を仕込みました」。

防水加工革で強度のある革を使ったバッグは、天候に関係なく外回りをするビジネスマンにはとくに向いているといえるだろう。

しなやかでソフトなタッチ感の「ダーズリーFF」は、レディース向けのショルダーバッグに変化。スマートフォンと長財布を収納できる程度のサイズで、外出の際に大きなバッグを持ち歩きたくないという人に重宝されるはずだ。

「山陽さんでつくった高機能の革を使って、よいものができました」と、胸を張る松村さん。どちらも多くの人に知ってほしいプロダクトだ。

第6回 国際 生地・素材EXPO 秋 レポート

製品を見てから革に目を向ける流れができた

原皮の処理から仕上げまでを一貫して行っている総合タンナーの山陽。今回の構成展『第6回 国際 生地・素材EXPO 秋』では、清川商店とコラボレーションしたGORE-TEX対応の防水革「GOREアリエルアンチック」やフッ素フリーの防水対応革「ダーズリーFF」など、「機能性商品」をテーマに多彩な革を揃えた。

ブースに立ったのは、山陽で開発を担当する松浦弘明さん。メーカーとコラボした今回の展示について、率直な感想を伺った。

「まずは製品を見て、触れて、それから革に目を向けるという方が多く、コラボそのものに意味があったと思いました。これまでの展示会は皮革関連のお客様のみで完結するものでしたが、今回は今まで革に興味のなかった方たちにもお越しいただけたという印象です」

会場である東京ビッグサイトでは、ファッションに関連するさまざまな展示が行われたが、今までまったくつながりのなかった業界の人々との交流も活発だったという。

「建材屋さんなどをはじめ、皮革関連のイベントにはあまりにいらっしゃらないような方たちともお話をさせていただきました。消費者の視点、異業種の方の考え方に触れて、ハッと気づかされる瞬間もありました。新しい考え方を教えていただき、ものすごく勉強になりましたね」
開発担当の松浦さんにとっては、ブースを訪れる人々から大いに感化された3日間だったようだ。

「みなさんが非常に真剣な表情で革を見てくれるので、気持ちが引き締まりました。開発担当として、今後もこういう場でアイデアを積み重ねていきたいです」

同様に、清川商店の松村由美さんも、これまで交流のなかった人たちとの出会いが刺激的だったそうで、「さまざまな業種の方たちと、まったく新しい商談ができました。電機メーカーの方からの興味深い相談などもあり、今後へつながる3日間になったと思います」と、充実した表情で話してくれた。
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