素材から作りまでメイドインジャパン。
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タンナーとメーカーの取り組みTanner & Maker

株式会社 山陽 × 筒井株式会社

革素材の裁ち残りを減らす加工に注力

株式会社 山陽は、2022年で創業111年を迎える総合タンナー。

「当社は約1万坪の敷地に工場を構え、原皮の処理から仕上げまでを一貫して行っています。クリエイターとのパートナーシップを重視しており、高度な技術を要求される革の開発にも積極的に取り組んでいます」

そう語るのは、山陽の間嶋正一さん。多くのメーカーから高く評価されているが、とくに紳士靴用の革では全国有数の生産量を誇る。

専門性の高い革を生産するには、相応の設備も必要だ。
山陽には、国内では数少ないピット槽があり、ナチュラルなヌメ革の製造が可能。大量の革原皮をなめすことができる大型のドラム、よそではなかなかお目にかかれない大型低温真空乾燥機、さらには小型アイロンやGORE透湿試験機なども導入している。生産量・品質ともに、多種多様なオーダーに対応することができるのが強みだ。
また、航空機部品製造にも適用されるJISQ9100を認証取得するなど、常に企業努力も欠かさない。
SDGsを意識した労働環境の整備に力を傾けている。REACH規則(化学物質の登録・評価・認可・制限にまつわるEU法)などの基準遵守の徹底が評価され、WCA(職場条件評価)の国際監査において、高数値を獲得した。

今回の『ジャパンファッションEXPO』においては、機能性のある革を軸にさまざまな革を出品する。中でも注目したいのが、「スムースソフトマット」だ。
「ソフトな質感でありながらコシ感を持たせた汎用性の高い牛革です。仕上げはオーソドックスですが、折り曲げた際の銀浮きおよび繊維のほぐれが抑えられています。裁断後に使われずに残ってしまう部分を極力減らすべく歩留まり率の向上を目指しました」

間嶋さんの話す「使われずに残ってしまう部分を極力減らす」という姿勢は、先述したSDGsに由来する。環境面に配慮しつつクオリティの高い革をつくるところに、山陽ならではの矜持を見た。

素材を無駄にせず気品あふれるバッグを生産

1939年の創業以来、世界のトップブランドのOEM製品を生産してきた筒井株式会社。

長い歴史においてターニングポイントとなったのは1999年。デンマークの童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの直筆サインを冠した初の自社ブランドを立ち上げ、大きな話題を呼んだ。当時完成させたアンデルセンバッグはデンマークで認可を受け、現在も筒井で生産を継続中。同時にブランド名としても使われている。
同社の石山祐一郎さんは、同ブランドの人気シリーズ「ギャザーバッグ」の新作をつくるにあたり、山陽のスムースソフトマットを選択した。

「従来のギャザーバッグはオイルレザーを使っていますが、多くのお客様の『もっとファッションに合わせやすい革がいい』というご要望を受け、上品な革を探していました。軽くてやわらかく、キップならではのキメの細やかさもあるスムースソフトマットは、まさにうってつけの革でした」
完成したバッグはソフトな質感を活かしたエレガントな仕上がりで、幅広いバッグコーデが可能に。石山さんによると、「革そのものにシワの寄りにくい加工が施してあるので、ほかの革だったら扱いづらいお腹の部分を有効に使い、負荷のかかりにくいショルダーストラップをつくることができました」。

はからずも、「裁断後に使われずに残ってしまう革を減らしたい」という山陽の思いと、「素材を無駄にせず余すところなく使いたい」という筒井のスタンスがみごとに合致した。

第13回 ジャパン ファッション EXPO 秋 レポート

サステナブル素材が世に求められている

原皮の処理から仕上げまでを一貫して行う総合タンナー、株式会社 山陽。3年連続の出展となる今回は、世界のトップブランドのOEM製品を生産してきた筒井株式会社と連携しての参加となった。

山陽のブースに3日間立った間嶋正一さんは、同じ会場で開催されていた『サステナブル ファッション EXPO[秋]』の集客の多さから、世の中のサステナブル素材に対する意識の高まりを実感したそう。「そういった方たちにレザーの魅力を伝えられるよう努めました」と、3日間を振り返った。
エコ意識の高まりは、来場者と話していても感じた。

「たとえばアパレル用の革でしたら、今までは綺麗な仕上がりのものが求められました。けれど、今回の展示会では『表情としてキズやシワがあるものをそのまま使いたい』というようなご要望もあり、素材を無駄にしないという意識の表れのように感じました」と、語ってくれた。

そんな中で、革が食肉の副産物であることも強くアピール。「口頭で説明しつつ、パンフレットもお渡ししました。革をつくるまでの流れを『知らなかった』という人はまだまだ多くいましたので、知識を広めるためにさらにアピールしていきたいです」と、言葉に力を込めた。

筒井の石山祐一郎さんは、「ペット関連やインテリア関連、出版社など、想像もつかないようなジャンルの方たちとの出会いがあり、ワクワクしました。海外の方が想像以上に多く、メイドインジャパンのプロダクトを現地で販売したいといった相談もありました」とコメント。刺激の多い3日間を過ごせたようだ。

今後に期待することとしては、「革から製品になるまでの過程をビジュアルで伝えられると、来場される方の理解がより深まるように思いました。こうした提案もさせていただきながら、方向性が合致すれば次回も参加したいですね」と話し、笑顔を見せた。
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