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暮らしに寄り添う日本の革2026年02月19日

日本でも、世界でも選ばれるために
足場を整え可能性を探し続ける「キモト・レザーワークス株式会社」

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日本でも、世界でも選ばれるために足場を整え可能性を探し続ける「キモト・レザーワークス株式会社」

前回から3回に分けてお届けしている「素材あってのこのアイテム タンナーの仕事と日本の革製品」の2回目。新幹線に乗って、10年ぶりに兵庫県まで行ってきました。
平らな土地と豊富な水源のもと、江戸時代中期に急速に発達したと言われる兵庫県の皮革産業。その中でも特に「なめし」を営み、グローバルなサスティナビリティ基準「LWG」認証を取得しているタンナーにお邪魔しました。

キモト・レザーワークス株式会社
スペシャリティショップ出身の鎌倉泰子さんが、日本中から集めた本革製品の中から、バイヤー目線、ユーザー目線でレザーアイテムをご紹介します。

初めてアイテムを見た時から、デザインと素材が密接な関係があることが感じられたこちらのショルダーバッグ。ふわっとした弾力と、適度なしっとり感が今までにない触り心地でした。そこで興味を持って今回はこの素材を作っている「キモト・レザーワークス株式会社」の木本文明取締役専務にお話を伺いました。

有限会社 清川商店

(メーカー:有限会社 清川商店

鎌倉

見応えのあるWEB、過去のインタビュー記事などを読ませていただきました。最初から靴用の革を作っていらしたんですか?何かきっかけが?

木本様

当初は衣料、ハンドバッグ、革小物を経て、婦人靴用の革にシフトして30年目になります。靴用の革は素材に機能が求められていて、それに集中的に取り組むようになりました。でも今は、それだけではありません。日本に限らず婦人用のレザーシューズのマーケットは縮小していますから、目の前の人とのやり取りだけでは入らない情報も、いずれ起きる可能性があるものとしてアンテナを張っています。別業界についての本を読んだり、海外の展示会に行き続けたりもしています。

鎌倉

2021年の秋にビッグサイトで開かれた「ジャパンファッションEXPO」で、御社の革を使った新製品が発表されましたよね。その後、製品化されて今だ「日本革市」のイベントでも来場者様に選ばれ続けています。特にギャザーが寄ったバッグについてなのですが、柔らかいだけではなく「ギャザーがきれいに寄るのに、弾力は保っていてシワになりにくいし、綺麗だな」という印象がありました。

キモト・レザーワークス株式会社

(写真はサンプルなので実際の製品とは仕様が異なります)

木本様

そうですね。あの革はまだ生産を続けていて、清川さん(有限会社 清川商店)その他に納めています。靴用以外のバッグ類、小物類の為の革を作ることへの興味が沸くきっかけにもなりました。ベースが靴用の革だと、できる事が変わります。例えば、ブーツなどの甲の部分に縫い目を入れて作るのではなく、1枚の革で作る「クリッピング」ができるような柔軟性と伸縮性のある革です。パッと見た時の「二次元」ではなく「三次元」で見て選ぶ必要があるんです。お財布などの平面で扱うなら、極端な言い方をすれば何でもいいとは言いませんが、なんとかなるものなんです。

鎌倉

曲線や立体感を考えるとそれだけではない、と?

木本様

はい。「どう機能すべきか」を考え、「目に見えない機能」を作り、適材適所を目指します。

鎌倉

「目に見えない革の機能」か...。なんかいい言葉ですね。

木本様

あの革は、「不良率」も低い、と聞いています。バッグを作る職人さんが言うには「扱いやすい」そうです。

KIYOKAWA×キモト・レザーワークス株式会社のコラボレーションで作られた革を使ったアイテム

鎌倉

最近開発された革についても教えていただけますか?

木本様

はい。これはT-CORE(ティーコア)という革なのですが、問屋さんと「どういう革が売れるのか」と考えて作った革です。コア、つまり芯の部分はお茶色...「茶芯」で断面はブラウンですが、外側はブラック。ベーシックで、日本人に愛される色の組み合わせです。

キモト・レザーワークス株式会社

鎌倉

縫製が難しい「袋縫い」をしなくてもこのきれいな断面を見せれば、シンプルな縫製でも個性的な製品が作れそうです。裏地も付けずに軽く仕上げるのもよさそうだし。触ってもいいですか?
見た目はかっこいい雰囲気で...あれ?柔らかいんですね!

木本様

そうなんです。固くないとだめというものもたくさんありますけど、我々は目を閉じた時に「あ、これは天然由来だな」ってことが想像できるようなもの作りがしたいと思っています。そこはずっとブレていません。

鎌倉

靴用の革だけではなく、服飾雑貨を支える素材作りを長くされてきたわけですが、その中で今、革製品に求められているのは何だとお考えですか?

木本様

ファッションのマーケットの中で、女性用のアイテムが占める割合は大きいですよね。そこで革が入り続けるには、よく言われる「もの作りのストーリー」だけではだめだと思います。いいものを作るための努力は大切ですし、それ自体には意味があります。が、結果はいい評価を得られなければ意味がありません。選ばれるもの、お客様、職人の要求に応えられるものを作らなければいけないと思っています。

鎌倉

付加価値を求める以前に、人の目に留まる魅力が必要、ということが今、木本様と私の間の共通の認識と考えて間違いではないですか?

木本様

はい。

鎌倉

私は元々インポートのファッションアイテムを扱う会社でバイヤーをしていたので、まず基本的なクオリティを含めた見た目のインパクトに心を掴まれて、「どうやって作られているんだろう」とその後から背景を探る、という仕事の仕方をずっとしてきたんです。なので、ものが作られた「こだわり」まで意識が向くのは少し後で、まず「見た目」が素敵じゃないと世界観にも素材にも惹かれない。それはバイヤーだけではなく、消費者も一緒なのでは?と思います。

木本様

その全てが、一流ブランドのストーリーには含まれていますよね。ファッションブランドだけではありません。人が関わってきたという時間の感覚や、「ヘリテージ」が戦略として含まれているのでしょう。日用品、工業製品にも言えると思います。

鎌倉

心に訴えるものと目に訴えるものの両方が無いとだめなのですね。もう「目に見えないこだわり」だけでは勝負できない。それを身に着けることで、高揚感と付加価値がもたらす満足感の両方が同時に得られるものが「欲しいもの」なんだと思います。

キモト・レザーワークス株式会社

木本様

姫路やたつのは革の産地として知られてはいますが、ヨーロッパを初め、国内でも革の産地は他にもあります。設備投資をしなければ、競争力のあるものを作れません。日本の人口についてお話しますと、人口は減り続けるだけでなく、2050年には高齢化がさらに進むと予測されています。それを考えると、その中からビジネスチャンスを見付けないと...世界で選ばれる革を作らないと、日本の革は生き残れないと思います。

鎌倉

日本の革が世界に出ていくには何が必要だと思われますか?

木本様

デザインやクオリティだけではなく、「LWG」をはじめ各国の環境基準に合わせないと、まずスタート地点にさえ立てません。でも、「エコ」について考えた工程と薬品だけで作ると物性が落ちる場合があるんです。

鎌倉

本来求められていたはずの機能を満たせなくなってしまうことがある、ということですね?

木本様

環境負荷が低い革を作りたい、そのためにはこの薬品を使わずに革を作りたい、と悩みます。いい製品を作るための薬品と製法を選ぶのか、環境負荷を下げるためのものを選ぶのか、っていう。環境を守るために「品質」を落としていいのか?と、いうことです。

鎌倉

悩ましいですね。

木本様

色々な側面を見ながら考えると、国内だけではなく海外でも戦える素材を作るのは本当に難易度が高い課題です。でも、「製品」なら戦い方も変わります。クロムなめしの革は、インテリアやスポーツジムで使うような製品にも使えるのでは、と考えています。ヌメ革の「経年変化」ではなく、「修復が可能」というところに注目すると、選び方も変わるのではないでしょうか。滑りを抑え、フィット感を求める「ハンガー」や「手すり」、ウェイトトレーニングの時に使う「ウェストベルト」なんかもいいですよね。耐久性、伸縮性、屈曲性、可塑性に着目できます。日本の高い縫製技術の他に、色々な業界へのプレゼンテーション力も求められますね。

鎌倉

なるほど。工業製品や無機質なインテリアアイテムに、温かみのある温度感というか、いい意味での生活感がプラスされるイメージですね。

木本様

ファッションについて成熟し、選択肢が色々ある日本の方について言えば、安くてもそれなりのクオリティのものがたくさんあるなかで、「ここぞ!」という大切な機会には、革製品を選んでほしいと思いますし、そういう時に選ばれるものを作らなければいけないと思います。マーケットの大きい女性のファッションアイテムの話をしたのでそれとは逆ですが、マーケットは小さくても、思い入れの強い特別な価値観を共有するような「サブカルチャー」も、何かレザーが使える道があるとも思います。

鎌倉

今後将来的に、「なめしてみたい皮」はありますか?

木本様

ブランド牛のくくりではなく、食の副産物としての「国産和牛」ですね。乳牛ではなく、食肉牛の皮、ナチュラルマークが多いものでも、商品化までもっていきたいです。「食育」を始まりとしてお金も廻し、社会貢献もするということをタンナーとして行いたいですね。世の中の役に立つものを、業界と消費者とで共有したいです。

「きれいでびっくりした!!!!!」
これが工場の入口に立った時の私の感想です。キモト・レザーワークスさんは、厳しい審査を乗り越えて、環境に配慮した皮革産業を推進するための国際的な非営利団体「LWG」のシルバーグレードを取得済。より広い世界へ出ていく足場を着々と固めていらっしゃいます。水と「生きもの」を扱い、環境と人に優しい企業体制を継続していくことはとても難しいことですが、「100年続く皮革工場を目指すなら、環境との共存は必須」とおっしゃる木本様。国内皮革の四大産地のひとつ、「兵庫県たつの」でグローバルな目線を持ち続け、人と企業の成長を温かく厳しい目で見ておられました。
キモト・レザーワークス株式会社

キモト・レザーワークス株式会社の革を使った製品はこちら
メーカーとタンナーの取り組み「キモト・レザーワークス×清川商店」の記事はこちら

次回の革市通信は次世代タンナーへのインタビュー。
兵庫県姫路市、とってもいいお天気でした。それでは、また。

文/鎌倉泰子

キモト・レザーワークス株式会社

キモト・レザーワークス株式会社

1969年にドラム1台でスタートしたキモト・レザーワークス株式会社。1990年代半ばから、婦人靴用を主軸とする革づくりに取り組んでいる。「当社のコンセプトは、『目を閉じて触れたときに家畜動物由来の温も……

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