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革市通信KAWAICHI COLUMN

暮らしに寄り添う日本の革2026年02月20日

「靴」で鍛えたなめしと加工「日本らしさ」を仲間と一緒に探したい「株式会社 金梅」

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「靴」で鍛えたなめしと加工「日本らしさ」を仲間と一緒に探したい「株式会社 金梅」

3回に分けてお届けしている「素材あってのこのアイテム タンナーの仕事と日本の革製品」の最終回。兵庫県で2軒目を廻りました。兵庫県姫路市、花田町の「高木地区」。なめし工場だけではなく、古くからの革加工業者が細い道の間に密集して迷路のよう!空は高くよいお天気、坂が無く平らなので、自転車を借りて廻ってみたいくらいでしたが、今日は仕事ですので。

スペシャリティショップ出身の鎌倉泰子さんが、日本中から集めた本革製品の中から、バイヤー目線、ユーザー目線でレザーアイテムをご紹介します。
株式会社 金梅

鎌倉

今日はお忙しいところお時間を取ってくださってありがとうございます。金田様は何代目でいらっしゃるんですか?

金田様

創業は100年以上前で、それから考えると4代目になります。袋物や小物用の革も作ってきましたが、ファストファッションが台頭してきた80年代からは紳士靴用が主軸になっています。主にクロムなめし、コンビネーションなめしです。

株式会社 金梅

鎌倉

先ほど工場内を案内していただきましたが、色々な「アイロン」の機械がありました。

金田様

アイロンだけではなく、ポリッシング(ツヤ出し)、バフ(起毛させる加工)など、革の表面を作る機械が多いです。キップ(仔牛革)を多く扱っていて、元々きめが細かいキップでも、更に綺麗なものが求められるので、熱や摩擦、圧力を使い分けて革の表面を作っていくんです。特に紳士靴でよく使われる「黒」の「黒み」を、薬品の力に頼らずに出していけると、とてもエレガントになるんです。

欧米では環境に優しく自然な仕上がりの「水性仕上げ」がトレンドで、この後当たり前のことになってくると思いますので、弊社もその潮流を意識しています。でも、各国の環境基準に合わせて作られている海外の薬品を使いながら、今まで通り物性を落とさずに、耐久性の試験に通るものを作るのには苦労しています。100年を超す歴史の中で培ってきたデータ、レシピはあるけど、機械も薬品も進化してきているので、その両方を職人の直観で操らなければいけないです。

鎌倉

数値化できないところ、ですね。

金田様

そして、出来上がったものについては「黒み」や「ツヤ」の言語化が難しいです。

鎌倉

御社の革を使った製品の一つに、有限会社 清川商店の「KIYOKAWA」というブランドのフォーマルバッグがあります。

有限会社 清川商店 製品
有限会社 清川商店 製品

(メーカー:有限会社 清川商店

鎌倉

フォーマルバッグって、緩急というか、直線と曲線のコントラストが美しさのポイントじゃないですか。四角くてシャープな雰囲気のフラップに、立体感のある側面というような。フォーマルバッグに関わらず、正直それに「向いていない」革を使ったバッグを目にすることが時々あります。2つの異なる表情を作るのに耐えられる革の加工、ってどういうものなんですか?

金田様

このバッグはウチが得意としている加工方法のひとつで「ガラス加工」「ガラスレザー」ですね。この加工は通常はシワになりにくい反面、その後の加工はしにくいんです。マチに無理して使うと折れてしまったりします。「ストレッチレザー」と呼べるほどのものではないのですが、なめしを施したあと、繊維の復元力を精一杯活かして少し伸縮性が出るように、染色の時に油分を足しています。我々は「油入れ(あぶらいれ)」って言ってます。

鎌倉

「ひと手間」がやはりあるのですね。御社が作る革で、特に「これが得意」というものは何ですか?

金田様

キップレザーの話に戻りますが、元の素材を活かした「自然な仕上げ」が得意です。お化粧でいうところの「ナチュラルメイク」の革、です。でも、それは素材を活かしてメイクは薄く、というのではなく...

鎌倉

素肌メイクが上手な人!みたいな感じですか?

金田様

そうそう!

株式会社 金梅

金田様

今は9割以上がメンズアイテムに使われています。1990年代から2000年代初めにロングブーツが大流行した時は、ウチの革もたくさん使われました。メンズシューズに比べたら、レディースの、しかもロングブーツの革の使用量は何倍もありますから。

鎌倉

そういう時代、ありましたよね。あの頃の13㎝ヒールのブーツが作れるシューズメーカーのひとつはもう廃業したそうですし、ハイヒールを作れる職人さんが激減していると聞いています。

金田様

ファッションは一巡しますから、またロングブーツが復活して流行ることがあるかも知れませんが、その時にはもう生産は海外にいってしまうんだと思います。

鎌倉

では、ブーツはおいておいて、何か御社の革を「こういうものに使って欲しいな」って思うものはありますか?

金田様

アイテムで言うとすぐには出てきませんが、自分で色々やってみて、物性試験に出してみたりもしています。キップのようなデリケートな革でもハードな環境に耐えられるエンジニアブーツに使われてもいるので、なめしと加工で鍛えた技術を、牛だけに関わらず色々な性質の動物の革に応用してみたいです。

鎌倉

革業界の存続のために、できる事をできるところがやろう、という感じでしょうか。

金田様

この業界では、薬品業者にお願いして希望のものを作ってもらうのではなく、自分たちで薬品を調合して革に合うものを手探りで作っていく職人気質の人が多いんです。効率はよくないのかも知れませんけど。環境に優しい工場はすぐには作れないから、薬品の使い方を工夫して、今までの方法とは違うやり方で、環境にも配慮しながらより品質のいいものを作ろうと頑張っています。ウチは大手ブランドと長くやらせていただいていることもあり、期待通りのクオリティを維持することと、「殻を破る」ことも必要だと思っています。

株式会社 金梅

鎌倉

将来的にチャレンジしてみたいことはありますか?

金田様

輸出に力を入れたいですね。「日本らしい革」をもっとつきつめて広めたい。それは、有名ブランドと勝負したいということではなく、日本でだから作れる革について具体的に研究して、どんなものが求められているのかを考えて作りたいです。素材として求められているものが違いますし、欧米と日本とでは牛の肉の質感も違いますし、まず飲んでる水が全く違いますし。原皮の性質が違うので、そのあたりからスタートしないといけません。

細い道を辿って金梅様に行ったので、「どのへんだったのだろう」と思い家に帰ってから航空写真で高木地区を見たのですが、工場が多いのでだいたい「グレー」の建物ばかりでよくわかりませんでした...。が、「碁盤の目」になってはおらず工場が密集していて、川が近いことはわかりました!「昔は川でなめしていた時もあるんだから」と、金田さんもおっしゃっていましたし、姫路で有名な「白なめし」は高木地区も通って流れる「市川」は「白なめし」の発祥の川ですものね。
3回に渡ってお届けした、「素材あってのこのアイテム タンナーの仕事と日本の革製品」。日本の革製品だけではなく、それを支え続ける「タンナー」の仕事に興味を持っていただけると嬉しいです。私もまだまだ行ってみたい工場がありますので、また機会があれば是非ご紹介させてください。

その他のタンナーの紹介記事はこちら

それでは、また。

文/鎌倉泰子

株式会社 金梅

株式会社 金梅

日本の皮革産業発祥の地である兵庫県姫路市。株式会社 金梅は、この地域で100年以上にわたり製革業を営んできた歴史あるタンナーだ。 現在は、紳士靴用の革をメインに製造している同社だが、DCブランドが流……

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