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日本のタンナーTanner

感性と物性のバランスに優れたレザーを生産
株式会社 マルヒラ(兵庫県たつの市)

1若手が中心となって革をつくる

1958年創業のマルヒラの工場は、活気に満ちている。
工場内に足を踏み入れると、30名以上の職人が、それぞれの持ち場できびきびと作業をしている。平均年齢は40代。20~30代の若手も見受けられる。
もともとは靴用の革を生産していた同社だが、20年ほど前より主力を袋物に移行。現在は、レディースバッグ用のレザーをメインに製造している。
「原皮はいろいろな国のものを使っていますけど、アベレージ的に質がいいのはやはり国産です。なかでも北海道・東北産のものは虫食いも少なく、突出して生地の質がいいですね」
そう語るのは、営業部長の椋亮さん。現在は、常時200~300種の革を生産している。工程においてとくに力を入れているのが、物性と感性のバランスのとり方だ。
「レディースバッグの革で感性を出すとなると、どうしても発色勝負になります。ただ、感性だけを高めても、それはそれで使いにくいという話になる。そこで耐摩擦を強くするなどして物性を高めていけば、どうしても感性が下がってくる。いかにバランスをとり、どうやって革らしさを出すかが大切なポイントになります」
仕上部長という肩書を持つ藤瀬信成さんの言葉に、椋さんも頷く。革は創意工夫のうえで完成するのである。

2特殊な仕上げ技術で革の価値を高める

そんな同社の製造工程において重要なのが、仕上げ部屋による作業だ。製品にしてからバフ当てなどの加工をする靴とは違い、鞄は革の品質そのものが出来を左右する。そのため、念入りな仕上げが必要となる。
「この部屋は通年で一定の温度が保たれています。その理由は、手仕事で革に浸透させたワックスによって、色を引き上げるためです。たとえば冬場なら、革が冷たくて外気温も低かったら、中の色が上がってこない。そこで、ホットカーペットを敷くなどの工夫をして革を温めながらワックスで色を引き上げていくと、自然で深みのある風合いになります」
藤瀬さんが話すとおり、このような作業を通して、さまざまな革が完成する。今回紹介する「ビゾンテ」というレザーもそのひとつだ。
「ビゾンテは、厚めですがやわらかさのある革です。タンニンの量はかなり多くて、いわゆるヘビタンと呼ばれる革よりも多いくらい。タンニンを多量に使いながら、固くならないように気を遣っています」
そう話す椋さんによると、ビゾンテが開発されたきっかけは、メーカーからのリクエストだったそう。現在は、問屋を介して福岡のリーブスにも卸しているが、製品の写真を見て「自分でも持ちたいと思いますね」と、顔をほころばせた。

3品質の安定性が日本の革の魅力

さまざまな人に話を聞きながら、独学で知識を吸収して今日に至っているふたり。藤瀬さんも椋さんも、日本の革の魅力は「品質の安定性」だと話す。
「一枚だけ特殊な革をつくることは難しくありませんが、ある程度のロットでも同じ品質を保てるのは、日本だからこそできるのではないかと思います」と椋さんが話せば、藤瀬さんも「僕らタンナーの仕事は品質を安定させることですからね」と、話を受ける。
また、日本の革を世界に広めるための活動の一環として、ジャパン・レザー・プライド・タグも申請。椋さんは、「ジャパン・レザーのブランディングは、1社でできることではありません。このようなタグの存在を周知し、問屋さんやメーカーさん、薬品屋さんと協力していくことが大切になると思います」と語ってくれた。
「革づくりに関しては、20年経ってもまだまだわからないことがありますが、そこが面白い」と、口をそろえて語るふたり。革の世界はどこまでも奥が深いようだが、若手が充実しているマルヒラは、今後もますます発展していくだろう。

2019/8/27 公開
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