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日本のタンナーTanner

シビアな要求が革づくりのモチベーションになる
有限会社 橋本製革所(兵庫県姫路市)

1丁寧に時間をかけて納得のいく仕上がりに

「革づくりはインスタントにはできません。どの作業にも丁寧さが必要です」
橋本製革所の代表取締役である橋本成三さんは、一語一語を噛み締めるように話す。その様子から、誠実な人柄が伝わってくる。
同社の創業は1948年。草履の底に使うクロムなめしの革から始まり、靴用、鞄用、ベルト用と、多様な革を製造してきた。現在つくっているのは、ベルト用の革が6割、袋物が4割。袋物を始めてからはタンニンなめしにも対応している。
「一番気をつけているのは、革の質感を安定させること。そのためには、染色が終わってから水が切れるまで馬台に寝かせ、乾燥させるときには表面だけでなく芯まで乾くよう、ゆっくりと待ちます。一つひとつの工程に時間をかけることで、やっと納得のいく出来に仕上がりますね」
安定した品質の革を供給するため、自らを律し、けっして楽をしない。「お客さんに褒められるのは当然で、あまり嬉しくないです。厳しいことを言われたときに、『よし、がんばろう、次につなげよう』と思います」というのだから、どこまでもストイックである。

2信頼を寄せるのは革を大切に扱うメーカー

全国のメーカーや問屋と取引のある同社だが、とりわけ濃い関係性を築いているのが福島市の鞄工作社いたがきだ。展示会での出会いをきっかけに徐々に親交を深め、オーダーを受けて鞄に使うソフトものの革をつくるようになった。
「いたがきさんに求められているのは、しなやかで、キズがつきにくくて、色合いの良い革。そこに辿りつくのは簡単ではなくて、何度も染色して、乾燥と加脂を繰り返して、ようやく満足のいく質感になります」
橋本さんは、そんな革でつくられる鞄を「きちんと質感を生かした形になっている」と、絶賛する。また、以前、工場へ見学に行った際に、ものづくりの姿勢に感銘を受けたという。
「ひと口に革と言っても、部位によって繊維の質感はまったく異なるので、隅から隅まで使うのは難しい。だけど、いたがきさんは、糸のような状態になるまで革を余すことなく使ってくれていました。僕たちタンナーからしてみれば、このうえなく嬉しいことです」
そんな現場を見たのなら、ものづくりにも一層の力が入ろうというもの。橋本さんは、鞄工作社いたがきに共感と敬意を抱いている。

3日本の皮革産業の肝はチャレンジ精神

さらに橋本さんは、日本の皮革産業に関わる企業として、誇りを持って仕事をしていきたいと語る。
「日本は消費者の目が厳しいし、メーカーさんも問屋さんも妥協しません。シビアな要求をされることもあるけど、それを乗り越えるからこそ品質を向上させられるし、次々と新製品も生まれます。日本のタンナーは、そのへんの姿勢が違いますね」
そんな日本の革をより広めるためのジャパン・レザー・プライド・タグも、好意的に捉えている。
「国産の革というのを証明できるのはええことやと思います。50年、100年と長い年月をかけてじっくり定着させていき、最終的には日本産のすべての革に付けられるようになると理想的ですね。とにかく、タグを汚さないような革をつくり続けていきたいです」
今後は海外への出荷も視野に入れているという橋本さん。日本の天然皮革を世界にアピールするために、これからも変わらずひたむきに仕事と向き合っていく。

2018/12/19 公開
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