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日本のタンナーTanner

革から製品まで一貫生産する爬虫類専門タンナー
株式会社 山本工業(東京都荒川区)

1問屋機能を備え小ロットの注文にも対応

爬虫類専門のタンナーの数は世界に20社、日本に6社。そのうちの1社が、東京・荒川区に工場を持つ山本工業だ。1963年の創業以来、半世紀以上にわたって爬虫類革のなめし・染色を行っており、その技術力は高く評価されている。
山本工業は、フランスのHCP社、スペインのVERDEVELENO(ヴェルデヴェルノ)社とパートナーシップを結び、世界規模で在庫を共有。あらゆる種類の革を仕入れ、加工することができる。
「当社は問屋としての機能も備えており、国内市場に向けて良質な革を安く、必要な人に必要な量を届けることができます」
そう語るのは、3代目の山本健太さん。爬虫類革の認知度を高めるため、小規模生産のメーカーや個人で活動するデザイナーからの小ロットの注文にも対応。山本さんは、「ひとりでものづくりをする職人さんを応援する意味も込め、1枚から対応しています」と、にこやかに話してくれた。
また、2009年には山本製鞄という名称のメーカーを設立。原皮のなめしから製品の生産・販売までを一貫して行える体制を整え、エキゾチックレザーの普及に尽力している。

2繊細な作業と緻密な管理で美しい革に

山本工業で扱っているのは、ワニ、ヘビ、トカゲ、ゾウ。ヘビとトカゲは原皮からなめしている。
爬虫類革の製造は、牛などの一般革とは異なる工程が随所にある。ウロコの除去は石灰漬けという工程で行っていく。なめしの際はドラムに水をたっぷり入れ、原皮を泳がせるようにする。乾燥させる場合は伸縮を防ぐため、革を板に伸ばし釘で打ち付ける。こういった工程以外にも、大切なポイントがいくつもある。
「爬虫類革は薄くて切れやすいという性質上、作業に繊細さが求められます。また、生きていたときの体温が低いため、温度管理も非常に大切ですね」
なめしを終えた後の染色においても、染料の調合、PHや湿度の管理を厳密に行う。近年はSDGsの観点から、ノンクロムやフルタンニン、藍染に草木染めなどのオーダーもこなす。さらに、グレージングなどの仕上げによって、美しさを際立たせる。
山本さんは爬虫類革の魅力について、「それぞれ斑(ふ)が異なるので、一枚一枚にオリジナリティがあります」と、テクスチャの特性を語ってくれた。

3日本のタンナーから世界のタンナーへ

職人の経験と勘が出来栄えを大きく左右する爬虫類革。マニュアル化するのが難しい仕事ではあるが、山本工業ではこれまで蓄積してきたデータを活用し、作業の自動化を推進している。リモートで操作できるイタリア製ドラムの導入などはその一例である。
コロナ禍が長引く現在に対応する設備を整えつつ、目標とするのは世界のニーズに応える革づくりだ。
「今は日本のタンナーですが、やっぱり世界のタンナーでありたいんです。国内需要だけでは苦しくなっていくと思うので、世界の中で自社の存在をしっかり確立してマーケットを広げ、求められる革を柔軟につくっていきたいです」
山本さんの考える日本の革ならではの特性は、「丁寧さ、正確さ」。厳しい検品基準をくぐり抜ける安定した品質の革を、できる限り安価で供給していきたいという思いがある。
「爬虫類革は高価で敷居が高いというイメージを払拭したいです。今は若手のクリエイターさんたちが『輸入物より品質が良い』といってうちの革を使ってくれるようになったので、革づくりにやりがいを感じますね。いろいろな方たちの力をお借りして、爬虫類革の魅力を浸透させていきたいです」
山本さんはヴィジョンの実現に向け、ひたむきに努力を積み重ねている。

2020/9/23 公開
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