飽くなき探究心で本革の価値を高める「革の研究所」
有限会社 T.M.Y’s(東京都墨田区)
革を美しく仕上げる染色・加工のプロフェッショナル
日本のタンナー集積地のひとつ、東京都墨田区。このエリアで染色・加工専門のタンナーとして名を馳せるのが、有限会社 T.M.Y’s(ティーエムワイズ)だ。1923年創業、2006年に屋号を変え、100年を超える歴史を歩み続けている。
メインで製造しているのはシープスエードで、常時200色以上の在庫を保有。発色の良さだけではなく、きめ細やかでなめらかなタッチ感も魅力だ。銀付き革も製造しており、ソフトでふっくらとした風合いのラムやゴ―トなども取り扱っている。
メインで製造しているのはシープスエードで、常時200色以上の在庫を保有。発色の良さだけではなく、きめ細やかでなめらかなタッチ感も魅力だ。銀付き革も製造しており、ソフトでふっくらとした風合いのラムやゴ―トなども取り扱っている。
オーダーに沿った染色・加工を得意とし、とくにフィルム加工や箔貼りには定評がある。この加工法では、塗装とは異なる美しさを革に付加することができる。
「フィルムの種類は数千種類あり、アイロンを使って貼り合わせています。革とアイロンの組み合わせによって、驚くほどの数の柄を生み出すことができるんです。ほかにも、さまざまな染色や加工をすることができます」
そう話すのは、代表取締役社長の渡邊守夫さん。革の話をするのがじつに楽しそうで、「天然素材の革に同じものはひとつとしてありません。それゆえ、同一の染色や加工をしても、一枚一枚にわずかな違いが生じます。今も試行錯誤の繰り返しですが、そうやって革と向き合うことにやりがいを感じています」と、目を輝かせる。
そう話すのは、代表取締役社長の渡邊守夫さん。革の話をするのがじつに楽しそうで、「天然素材の革に同じものはひとつとしてありません。それゆえ、同一の染色や加工をしても、一枚一枚にわずかな違いが生じます。今も試行錯誤の繰り返しですが、そうやって革と向き合うことにやりがいを感じています」と、目を輝かせる。
好奇心旺盛な渡邊さんは、毎年のようにヨーロッパで開催される国際的な皮革見本市を訪れ、その時々の世界的な流行を学び、革づくりに取り入れてきた。そんな中で、自社が製造する本革も含めたジャパンレザーの魅力に改めて気づいたという。
「ヨーロッパでは、革は天然素材という共通認識があり、ちょっとしたキズや色落ちは当然のものとして受け入れられています。一方、国内のマーケットで求められるのは、色落ちや色ムラ、キズのない革です。オーダーに沿って瑕疵のない革をつくる日本のタンナーの技術は素晴らしいと思いますし、私たちもできる限り要望に応えられるよう努力しています」
そう語りながらも、「あくまで個人的な想いですが、ヨーロッパの人たちの革に対する感覚が羨ましくなる時もあります」と、正直な気持ちを口にする渡邊さん。
そう語りながらも、「あくまで個人的な想いですが、ヨーロッパの人たちの革に対する感覚が羨ましくなる時もあります」と、正直な気持ちを口にする渡邊さん。
近年はタンニンなめし革など、ナチュラルな風合いの本革づくりを研究している。50年以上のキャリアがありながら、探究心は一向に衰えていない。
工場新設と同時に設備面と対外アピールを強化
近年、同社では革を研究するための環境が整いつつある。
2020年に完成した新工場では、作業動線を考慮したレイアウトを採用するほか、「いろいろなサンプルづくりを試すのに便利」と話すステンレスのドラムに加え、インクジェットプリンター、レーザー加工機などを導入して設備の充実をはかった。
また、革をより身近に感じてもらうため、多様な革やレザーアイテムを展示したショールームを開設。工場見学の受け入れ(予約制)も積極的に行っている。
2020年に完成した新工場では、作業動線を考慮したレイアウトを採用するほか、「いろいろなサンプルづくりを試すのに便利」と話すステンレスのドラムに加え、インクジェットプリンター、レーザー加工機などを導入して設備の充実をはかった。
また、革をより身近に感じてもらうため、多様な革やレザーアイテムを展示したショールームを開設。工場見学の受け入れ(予約制)も積極的に行っている。
「工場見学の反響はとても大きく、メーカーの方だけではなく、学生や一般の方も多くお越しいただいています。製造工程を見てもらうだけではなく、本革が副産物を活用した天然素材であることをお伝えすることができるので、私たちも非常に有意義な時間を過ごしています」
工場の刷新と同時に、同社の別称を「LEATHER LAB TOKYO」とし、先進的な革づくりをする「東京の革の研究所」として対外的なアピールを強化。また、オンラインショップで革を一枚単位から販売するほか、シューズブランドおよびフォトグラファーとのコラボレーション、子ども向けワークショップの開催など、その取り組みは多岐にわたる。
工場の刷新と同時に、同社の別称を「LEATHER LAB TOKYO」とし、先進的な革づくりをする「東京の革の研究所」として対外的なアピールを強化。また、オンラインショップで革を一枚単位から販売するほか、シューズブランドおよびフォトグラファーとのコラボレーション、子ども向けワークショップの開催など、その取り組みは多岐にわたる。
SDGsの観点でも、世界水準レベルのタンナーになるべく、水と薬剤が関わる環境対策に万全を期している。自社で排水設備を整え、製造工程で使用した水の処理を徹底。「水のまち墨田」の自然環境を守るために水質検査の回数を増やすなど、努力を続けている。
「今後は、LWG(Leather Working Group=皮革の安全や環境対策を啓蒙・監査する国際団体)の認証取得が目標です。スタッフ一丸となって頑張っていきたいと思っています」
数年前に後継者が見つかった渡邊さんは、「会社を受け渡すまで、できることはやっておかないとね」と、笑顔を見せる。若い力が育ちつつある同社の今後に、大きな期待が寄せられる。
数年前に後継者が見つかった渡邊さんは、「会社を受け渡すまで、できることはやっておかないとね」と、笑顔を見せる。若い力が育ちつつある同社の今後に、大きな期待が寄せられる。
2023/8/29 公開