分業制度の高木地区になくてはならない存在
寺一皮革(兵庫県姫路市)
1塗装から仕上げまでを請け負う
「創業者は父の寺内正一郎。寺内の『寺』と正一郎の『一』で寺一皮革です」
そう話してくれたのは、寺一皮革の井料加保里さん。結婚して姓が変わった後も、姉の寺内真寿美さんとともに正一郎さんから受け継いだタンナーを切り回している。
寺一皮革の歴史がスタートしたのは60年前。市川の西岸よりほど近い場所にタンナーを構え、ドラムなどの設備を少しずつ整えていった。当時は原皮の処理から仕上げまでを一貫して行っていたが、現在の業務は塗装工程がメインとなる。
「薄化粧で何度もスプレーして、徐々に色を見本に近づけていきます。お客様のオーダーによって、細かく対応します」
オートスプレーマシンで革を塗装する際は、色ムラができなくなるまで何度も行うのが井料さんのこだわり。仕事ぶりは丁寧で繊細だ。「ファンデーションと一緒で、濃すぎたら駄目ですね」と言いながらチャーミングな笑顔を見せたと思うと、またいそいそと仕事に打ち込み始めた。
2自社ブランドの立ち上げも予定
日本一のタンナー集積地であり、分業制が確立している高木地区。寺一皮革の塗装~仕上げ技術は、同業他社からも厚い信頼を寄せられている。
そんな井料さんは、大きな目標を持っている。それは、タンナーを母体とするブランドの立ち上げだ。現在は稼働していないドラムを置いているスペースに工房を設け、革小物の制作・販売を行う予定だという。
「大きなメーカーさんみたいにやるわけではなくて、コツコツできる範囲でやっていければいいかな、と思っています。もともと、革で何かつくるのが好きですから」
井料さんは以前からレザークラフトの勉強をしており、身内からオーダーがあれば、財布やバッグ、スマホケースなどをつくってきた。手渡した際に喜ばれる嬉しさは、格別のものだったという。今後の展開が楽しみだ。
3JLPタグの効果に大きな期待
そんな井料さんも、ジャパン・レザー・プライド・タグに大きな期待を寄せている。
「シンプルに日本の革を使っているとアピールする、いい方法だと思います。知り合いに、うちの革を使ってレザークラフトをしている方がいるのですが、『このタグを使ってもいいですか?』と聞かれたこともあります。JLPタグの存在を知ったら、使いたいという方はほかにもいるのではないでしょうか」
井料さんは、メイド・イン・ジャパンの革製品が欲しいという消費者に向けて、さらなるアピールを期待している。