顧客の視点に立ち、求められている革を安定供給
イサム製革(兵庫県姫路市)
銀浮きのしないガラスレザーの製造に一日の長あり
イサム製革の設立は、1950年代後半にさかのぼる。社名の由来は、2代目である中島一雄さんの兄、中島勇さんの名前から。主力商品は、エナメルレザーやソフトレザーといった変遷をたどりつつ、30年ほど前から紳士靴用のガラスレザーに重きを置いている。
ガラスレザーは、光沢感のある風合いが特徴。バフィングという工程で革の表面を平滑に整え、合成樹脂を塗装して仕上げる。そのため、キズやシワが多い革素材でも、加工によって品質を担保できる利点がある。代表の一雄さんは、「安定した商品供給」をモットーに、長年にわたり上質なガラスレザーを追求してきた。
水膨れやシワを防ぐという意味では、染色後の乾燥にも配慮が必要だ。
ガラスレザー以外では、アンチックレザーも得意とする。アンチックレザーとは、金属のロールと染料を用いてムラ染めした革のこと。不規則に模様がつくので、一枚一枚異なる表情に仕上がる。同社には12本のロールがあり、さまざまな模様を付けることが可能。異なるロールの組み合わせによって、この世に二つとないオリジナルの革を生み出すことができる。
作業途中の細かいチェックで品質維持を実現
この技術を継承しようと汗を流しているのが、3代目の隆満(りゅうま)さんだ。隆満さんは6年前から家業の仕事を学び始め、主に仕上げを担当している。
先ほど述べたとおり、同社のモットーは「安定した商品供給」。取引先の求める革を100点のクオリティで完成させるという理念を、全社員で共有している。そのために欠かせないのが、作業の区切りごとに行う品質確認だ。隆満さんは、父の一雄さんとともにこのチェックを担当している。
取材当日も、現場の至るところで一雄さんと隆満さんのもとに職人が駆け寄り、革のチェックを頼む場面が見られた。隆満さん自身は謙遜するが、一雄さんはその活躍について「革を見る目がだいぶ養われてきたね。前は教科書どおりの見方だったけど、ここにきて、ようやくお客さんの視点に立てるようになってきた」と、目を細める。
同社は、独自の基準を満たす革を扱う姫路・高木地区の新ブランド「タンニングプライド」に参加。一雄さんの兄、勇さんが社長を務めるユニタスファーイースト株式会社の後押しを受け、各タンナーと協力して高木レザーのブランド化を推進している。
品質の向上同様、ブランディングの大切さをしっかりと認識している隆馬満さん。新世代ならではの感覚で、本革の価値をさらに高めていくつもりだ。