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日本のタンナーTanner

牛革を下地にコードバン調の風合いを表現
株式会社 小寺製革所(兵庫県たつの市)

完成したエンジニアブーツを手に笑顔を見せる岸元さん。

トレンドに合わせ、多種多様な革を世に送り出してきた株式会社小寺製革所。このたび、新機軸として打ち出すことになったのがコードバン調のワックスレザーだ。創意工夫を凝らしたワックスレザーと、この革を使用しているATTRACTIONS(以下アトラクションズ)のエンジニアブーツについて、若手職人であり広報としても活躍する岸元洸季さんに話を聞いた。

アメカジライクなワイルドさが魅力

ワックスレザーはどのような経緯で開発に至ったのでしょうか。

クロムとタンニンのコンビネーションなめしで仕上げたワックスレザー。

社長の小寺とベテランの技術者、そして私たち職人でファッションのトレンドをチェックするなかで、アメカジに注目が集まっていることを知ったのが出発点です。アメカジのアイテムには馬革やコードバンが使われていますが、牛革をベースにしてコードバンに近い雰囲気を出せないかというところから開発がスタートしました。

研究・開発はどのように進んだのでしょうか。

ワックス仕上げ特有のぬめり感を確認する岸元さん。

まずは下地となる原皮から考え、次に染色・加脂の方法、タンニンを食わせるタイミング、ワックス仕上げのやり方といった流れで、問屋さんとキャッチボールを繰り返しつつ開発していきました。

ワックスレザーの風合いの特徴は?

ワックスレザーの下地はクロムなめしなのですが、染色の過程で植物タンニンを多く与えています。そのため、クロムなめしならではの柔軟さと、タンニンなめしならではの硬さ、充填感を両立しています。アメカジライクなワイルドさ、触ったときのワックス仕上げならではのぬめり感がうまく表現できたと自負しています。ちなみに、厚みは2.5~2.8mmほどあります。

色合いも美しく仕上がっています。

革を伸ばす工程で活躍するダイナバック。

一度、銀面をこすり、ワックスと顔料・染料で色合わせをしています。また、今回は経年変化を楽しんでいただくために、茶芯にチャレンジしました。エイジングが進むにつれ、表面の黒い塗装がこすれ、茶色の芯が顔を出すようになります。長く使えば使うほど、味わいのある表情になっていくと思います。

そのほか、製造における工程で重要なポイントは?

ほかの革をつくるときと同じく、どの工程も大切です。たとえば、石灰漬けで原皮の繊維をほぐす際のバランスを見極めることもそうですし、ダイナバックというマシンを使い、熱を加えたゴム状のシートで上下から革を挟んで伸ばすことも重要です。ほかにも、仕上げで十分な耐性を付与するなど、さまざまな作業があってワックスレザーが完成します。

ワックスレザーの開発にあたっては、レザープロダクトも展開するアパレルメーカー「アトラクションズ」の方が関与されているそうですね。

じつは、ワックスレザーをつくるきっかけをつくってくれたのは、アトラクションズの西崎(智成)社長なんです。一度、弊社の工場まで見学に来ていただいたことがあるのですが、そのときにちょうど仕上がったワックスレザーの原型となるサンプルを見ていただき、「この革、いいですね」とおっしゃってくれて。本当に巡り合わせですね。

ワックスレザーを使ったアトラクションズのエンジニアブーツ「Lot.269 Engineer Boots -Steerhide-」をご覧になっていかがですか。

エンジニアブーツ「Lot.269 Engineer Boots -Steerhide-」

私たちタンナーは、当然、製品をイメージしながら革を製造します。今回もアメカジのエンジニアブーツに使われるということを想像しながら革をつくりましたが、実際に完成したアイテムを目の前にすると、「感慨深い」の一言ですね。私自身も経験があるのですが、良質な革を使ったエンジニアブーツは、履きこむほどに自分の足のかたちに近くなっていきます。色味も含めた経年変化をじっくり楽しんでいただけると、ワックスレザーをつくった私たちとしてもうれしく思います。
2025/9/12 公開
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