漆がきらめくApple Watchバンド
坂本商店(兵庫県姫路市)

Apple Watchバンドを手に持つ坂本さん。
なめしと漆塗りの技術を融合した「姫路黒桟革」で名を馳せる坂本商店。近年はプロダクトの開発にも取り組んでおり、型押しの黒桟革を用いたApple Watchバンド(以下、アップルウォッチバンド)が好調な売れ行きを見せている。開発の経緯から現在に至るまでのプロセスについて、4代目の坂本悠さん(以下、坂本さん)に話を伺った。
シボが均一な型押しの黒桟革を使用
アップルウォッチバンドはどのような経緯で開発することになったのでしょうか。

型押しの黒桟革を用いたApple Watchバンド。
坂本さん
アップルウォッチバンドは、コロナ禍に製品化して販売を始めました。その頃、展示会が軒並み中止になりまして、革を見ていただいて反応や評価をいただく機会が減ってしまって。そうなると、どうしてもモチベーションが保てなかったので、直接一般のユーザーにお届けできる製品の開発に踏み切りました。
製品をつくるにあたり、型押しの黒桟革を使うことになったご理由は?

「革の黒ダイヤ」とも称される姫路黒桟革の型押し版。
坂本さん
当社では黒桟革の極(きわみ)も製造しているのですが、こちらの革はシュリンクさせているので、部位によってシボ感が異なっています。一方、型押しであればシボが均一で歩留まりがよいということで、アップルウォッチバンドに使用することとなりました。
あらためて姫路黒桟革の魅力を教えてください。

4代目としてプロダクトの製造・販売に着手した悠さん。
坂本さん
やはり、革の黒ダイヤと呼ばれる漆のツヤと輝きが最大の魅力になります。光の当たり具合によって異なる表情を見せてくれるほか、経年変化によってきらめきが増していくのも漆塗りをしている黒桟革ならではだと思いますね。
デザイン性や機能面などで工夫したポイントは?

姫路黒桟革などが展示されているギャラリー。
坂本さん
どんなシーンでも使っていただける、シンプルでオーソドックスなデザインにしました。機能面においては、フィット感を向上させるために、裏革にはやわらかく通気性のよいシープ革を使用しています。ちなみに、製造は、同じ姫路市内のユニタスファーイストさんにお願いしています。修理やメンテナンスにもすぐに応じていただけるので、ありがたく思っています。
サイズおよびカラーバリエーションについて教えてください。

メイドイン姫路、メイドインジャパンの製品を世に送り出している悠さん。
坂本さん
サイズは41mmサイズと45mmサイズの2タイプです。時計バンドのカラーバリエーションは、グリーン、パープル、ブラウン、ブラック、ホワイト、レッド、藍染の7種類。アダプタはゴールド、シルバー、ピンクゴールド、ブラックの4種類を用意しています。
ユーザーの方たちの反応はいかがでしょうか。

なめしと漆塗りの融合で姫路黒桟革をつくる。
坂本さん
現状だと、ECサイトで実物を見たことがない方に購入していただくことが多くて。写真でも漆のツヤはある程度伝わっていると思いますが、実際に手に取っていただいた方から「漆塗りが美しくて感動しました」「日本の伝統工芸のすばらしさを知りました」といった感想をいただくことがあり、とてもうれしく思いますね。
国内はもちろん、海外の方にも受け入れられそうですね。

今後の展望について語る4代目の坂本悠さん
坂本さん
坂本商店では、15年ほど前から海外への発信を積極的に続けていて、近年はハイブランドにも革を使っていただく機会が増えています。海外の市場にはチャンスがあるという実感があるので、革も製品もどんどん海外に展開して、さらなる評価を得られるようにがんばっていきたいと思います。